• AGCが変えようとするもの

    VISION 02
    ELECTRONICS

    米国企業の
    エレクトロニクス
    事業買収は、
    5G時代を切り拓く
    戦略の一環

  • 私が解説します
    中島 陽司
    中島 陽司
    Yoji Nakajima
    事業開拓部 事業創造グループ
    兼 化学品カンパニー 戦略本部 
    企画室 戦略推進グループ
    兼 経営企画本部 戦略企画部 
    新事業企画グループ マネージャー
    2004年入社
  • ※所属部署は取材当時のものです。
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    5G=高周波の時代。
    誘電正接の低い材料に脚光

    フッ素樹脂の塗ってあるフライパンは、焦げつきにくいことをご存じかと思います。焦げつきにくい理由は、フッ素樹脂が多くの物質とくっつきにくい性質を持つためです。実はAGCはかなり以前に、金属や他の樹脂材料とくっつきやすいという、かなり変わった特性を持つフッ素樹脂を開発していました。「Fluon+ ADHESIVE EA-2000」と呼ばれる接着性のフッ素樹脂ですが、この材料が2020年にサービス開始が予定されている5G(第5世代移動通信システム)に向けて、大きな脚光を浴びはじめています。その理由は、誘電正接が低い材料でもあるからです。誘電正接が低いとは簡単に言えば、電気エネルギー損失が少ないことを意味します。5GをはじめIoT、ビッグデータの利活用など、まさに龙8国际娱乐官方老虎机が“爆発”する時代に入っていきますが、5G時代に使われる高周波は電気エネルギーの損失が大きいのが特徴です。その損失を極力最小化する樹脂が「EA-2000」なのです。それ以外にもAGCは、合成石英をはじめ誘電正接の低いガラスなどを開発済みであり、ラインアップも充実しています。
    これがなぜ、米国Park Electrochemical社のエレクトロニクス事業買収につながるかといえば、実はすべて未来につながっているのです。順を追って説明しましょう。まずプリント回路の基板は、樹脂と銅箔を張り合わせてできており(銅張積層板:Copper clad laminates:CCL)、「EA-2000」を使うと電気エネルギー損失が極めて低いCCLを簡単に作成することができます。「EA-2000」や誘電正接の低いガラスなど、電気エネルギー損失の低い材料を複数持つAGCがCCLメーカーを目指すという話になったのは、2015年でした。 CCLにパターンを切ると、5G時代に対応したガラスアンテナになります。ただ残念ながら、CCL自体の技術をAGCは持っていませんでした。その技術を獲得する狙いが、Park社のエレクトロニクス事業の買収だったわけです。
    インタビュー風景
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    素材の力で通信インフラの
    変革期に挑むAGC

    高周波を使うアンテナ基板は、NASAなどの米国航空宇宙分野で発展してきましたから、米国企業が強い分野でもあります。Park社を含め3社がハイエンドで有名で、AGCは2015年からそのうちの1社の買収を検討していました。その後、買収を視野に次世代高速通信5G向けの全社タスクフォースを立ち上げさせてくださいと、経営トップに私がお願いしたのです。もともと私は、大学で博士課程を修了した後、中央研究所で材料科学を主に手がけていたのですが、AGCの将来を見据えた戦略にも関わりたいと、化学品カンパニーの戦略企画室に異動した後のことでした。
    Park社のことも説明しましょう。同社はプリント回路基板用の樹脂製CCLを世界で初めて開発して業界にイノベーションを巻き起こし、今でいうベンチャーのような企業として発足したのですが、航空宇宙や高速通信、高速サーバ分野などでそのプリント回路基板が世界中で使われている、極めてブランド力の高い企業です。直近では新製品の「Meteorwave」というCCLが非常に高性能で、5G向けに急速に売り上げを伸ばしつつあります。企業文化はAGCに非常に近いものがあります。技術オリエンテッドで技術にプライドを持っている半面、お人好し(笑)。上場企業ですが規模としては中小で、近年は炭素繊維複合材料を重視するようになり、エレクトロニクス事業への投資を抑制していました。ですから買収のタイミングとしてもよかったし、エレクトロニクス事業の社員も買収を喜んでくれています。買収後は事業のトップが毎月来日され、すでに交流を図っています。2019年には私を含め数名が現地に飛ぶことになると思います。
    5Gに向けて、日本だけではなく米国、いや全世界がIoT、ビッグデータ、自動運転など龙8国际娱乐官方老虎机をキーワードに沸き立っており、世界は驚くほどのスピードで動いています。通信インフラ全体が変革期に入ろうとしており、技術開発によるイノベーションが急速に進んでいます。AGCは、これからの時代でニーズが高まっている、誘電正接の低い材料を豊富に持つ強みを発揮して、クルマのガラスアンテナ、基地局など、ガラスを生かした分野やコネクテッドの分野で、5G時代を切り拓いていきます。「EA-2000」、合成石英、誘電正接の低いガラス、ガラスアンテナ、Park社買収もすべて5Gイノベーションにつながっているのです。